運動会の花形種目だった人間ピラミッドが激減した最大の理由は、全国で毎年数千件規模の負傷事故が発生し、後遺症を伴う重大事故が社会問題化したことにあります。特に2010年代前半、全国各地の中学校・高校を中心に「より高く、より壮大に」という過度な巨大化競争が勃発しました。当時は学校だよりやローカルニュースで「本校伝統の10段ピラミッド完成」と称賛され、指導教員も達成感や連帯感を演出するために危険性を軽視する風潮が蔓延していたのです。
潮目が完全に変わったのは、2015年に大阪府八尾市の中学校で起きた「10段ピラミッド崩落事故」でした。157人の生徒が参加した巨大構造物がバランスを崩して一気に崩壊し、生徒1名が右腕骨折の重傷を負った映像がSNSやテレビ報道で拡散。ネット上では「これは教育ではなく危険な児童虐待ではないか」という猛烈な批判が巻き起こりました。さらに過去の事例を遡ると、頸椎損傷による下半身不随や死亡事故まで発生していた事実が公になり、世論の反発は決定的なものとなりました。
これを受けて文部科学省およびスポーツ庁は2016年3月、全国の教育委員会に対して「確実に安全が確保できない場合は実施を見合わせる」という事実上の規制通知を出しました。さらに自治体レベルで「人間ピラミッド・タワーの完全禁止」や「高さ・段数の上限設定」が相次ぎ、かつての危険なピラミッドは学校現場から一掃されることになったのです。