対人関係を避けたくなったとき、インターネット上の言説を検索して、さらに自分を追い詰めてしまう人が後を絶ちません。ここには、広く流布している危険な誤解が存在します。
最大の誤解は、「人と会わない期間が長くなると社会復帰できなくなるから、無理をしてでも少しは顔を出したほうがいい」という精神論です。もちろん、数ヶ月にわたる完全な引きこもりが長期的な課題を生むケースはあります。しかし、心が限界を迎えている急性期において、無理な接触を強いることは、骨折している足で「リハビリのため」と称してランニングをさせるような暴挙です。
不十分な回復状態のまま他者と接触すると、以前のようにうまく話せない自分に絶望し、さらなる自信喪失と対人恐怖を生み出す「二次被害」を招きます。エネルギーが底をついている時期に必要なのは、人との中途半端な繋がりではなく、完全な刺激の遮断と安心できる絶対的聖域の確保です。
もう一つの盲点は、「ポジティブに考え直せば人と会いたくなる」という認知至上主義の罠です。「人に会いたくない」という反応は、大脳皮質で論理的に生み出されているのではなく、扁桃体を中心とする情動系や、交感神経・迷走神経系といった自律神経反射が深く関与しています。神経系が「生命の危機」として警戒モード(闘争・逃走反応、または凍結反応)を発令しているときに、いくら頭で「感謝の気持ちを持とう」「相手は悪気がない」と言い聞かせても、身体の拒絶反応を止めることはできません。必要なのは思考の矯正ではなく、神経系の沈静化です。