竹内まりやが歌う「ウイスキーがお好きでしょ」がこれほど自然に響く背景には、作曲者である杉真理(すぎ まさみち)との半世紀近くに及ぶ深い絆が存在します。ふたりは慶應義塾大学の音楽サークル「リアル・マッコイズ」の先輩・後輩であり、アマチュア時代から共にセッションを重ねてきた盟友です。
杉真理は、大瀧詠一や佐野元春らと参加した『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』などでも知られる日本屈指のメロディメーカーであり、ビートルズ直系のキャッチーなポップセンスを誇ります。彼が1991年に「ウイスキーがお好きでしょ」を作曲した際、ベースにあったのはアメリカン・ポップスやジャズのスタンダードナンバーが持つコード進行とメロディの美しさでした。演歌歌手である石川さゆりに提供されたことで当時は哀愁漂う歌謡曲として開花しましたが、楽曲の骨格そのものには杉真理特有のポップスDNAが息づいていたのです。
サントリーからのオファーを受けて竹内まりやがこの曲をレコーディングするにあたり、アレンジャーとして迎えたのが名匠・服部克久でした。ビッグバンド風の華麗なホーンセクションと流麗なストリングス、そして夫である山下達郎のプロデュースワークが加わることで、杉真理が本来楽曲に込めていた「洋楽スタンダードナンバーとしての輝き」が見事に引き出されました。杉真理自身も当時のインタビューで「まりやが歌うことで、この曲が本来持っていたポップスとしての側面が完璧に表現された」と手放しで絶賛しています。