ネット上の育児掲示板やSNSでは、「体重が増えない=母乳の出が悪い=ミルクを足せば即解決」という単純化された言説が目立ちます。しかし、現場の助産師や小児科医が直面するトラブルの中には、ミルクを無理に足したことで逆に事態が悪化するケースすら存在します。
典型的な盲点のひとつが、「母乳の過大評価と授乳姿勢の不一致」です。授乳時間が左右合計で30分以上かかっていても、乳頭の先端しかくわえられていない場合、赤ちゃんは乳管を圧迫できず、空気を飲み込んでいるだけでほとんど母乳を飲めていません。その結果、お腹に空気が溜まって苦しくなり、途中で飲むのをやめてしまい、激しい夜泣きや体重減少につながります。
もうひとつの誤解は、「赤ちゃんの活動量と体質差」に対する認識不足です。同じ哺乳量であっても、起きている間じゅう激しく手足を動かす赤ちゃんや、筋緊張がしっかりしている赤ちゃんは、驚くほどカロリーを消費します。ネットの育児日記で「同じ月齢の子が8kgあるのにうちは6kgしかない」と悲観する声が見られますが、骨格や両親の遺伝的体質、運動量の差による体重の違いは非常に大きく、単一の数値比較は無意味です。
さらに、「隠れた哺乳不良(Oral Dysfunction)」も現代の小児歯科や助産ケアで注目されている盲点です。上唇小帯や舌小帯の癒着が強い場合、舌の可動域が制限されて哺乳瓶の乳首すら上手に押し潰せないことがあります。これに気付かず「赤ちゃんが飲みたがらない」「母乳がまずいのか」と思い悩んでしまう母親が後を絶ちません。体重増加の不良は、母親の責任ではなく、解剖学的・生理的なアプローチで解決すべき物理的課題であることが多々あるのです。