「妊娠何ヶ月で出産を迎えるのか」という疑問に対する医学的な回答は、「妊娠10ヶ月または妊娠11ヶ月」である。この回答を聞いて「10ヶ月を超えることがあるのか」と驚く人も少なくない。日常会話で用いられる「1ヶ月=30〜31日」という太陽暦の感覚と、産科医療で用いられる厳密な医学定義との間に大きな乖離があるからだ。
産科医学における妊娠期間の数え方は、世界保健機関(WHO)および日本産科婦人科学会の基準により、「7日間を1週」「4週間(28日間)を1ヶ月」と定義されている。このルールに従うと、妊娠月数の区分は以下の通りに進行する。
- 妊娠1ヶ月:0週0日〜3週6日
- 妊娠9ヶ月:32週0日〜35週6日
- 妊娠10ヶ月いつから:36週0日〜39週6日
- 妊娠11ヶ月:40週0日〜43週6日(医学上、42週以降は過期妊娠と定義)
出産予定日は「満40週0日(280日目)」に設定される。40週0日を迎えた瞬間、月数の数え方としては「妊娠11ヶ月」の初日に突入する。つまり、予定日ぴったり、あるいは予定日を過ぎてから出産した場合は、月数で表現すると「妊娠11ヶ月での出産」に該当するわけだ。
では、古くから日本で語り継がれてきた「十月十日(とつきとおか)」の言い伝えはどこから生じたのか。その真相は、太陰太陽暦を使用していた時代の「数え月」の概念にある。旧暦時代の日本では、1ヶ月を月の満ち欠け(約28日)で捉えていた。28日×10ヶ月=280日であり、まさに医学的な出産予定日である「40週0日=280日」と完全に一致する。末尾の「十日」に関しては、暦の端数調整や、最終月経の開始から受精・着床までのタイムラグを経験則として織り込んだ知恵など諸説あるが、いずれにせよ十月十日真相は「カレンダーの10ヶ月(約300日)ではなく、満280日(40週)を指していた」というのが歴史的・医学的な事実だ。
現代の産婦人科における出産予定日の計算方法は、問診時の最終月経開始日を起点とする「ネーゲレ概算法」(最終月経の月に9を足すか3を引き、日にちに7を足す)が基本となる。しかし、月経周期の乱れや排卵日のズレがあるため、妊娠8週〜11週前後に実施される超音波検査において、胎児の頭殿長(CRL:頭からお尻までの長さ)をミリ単位で計測し、最終的な予定日を確定・修正する手順が標準化されている。