古代日本の政治と文化の中心地として栄えた明日香村において、南西端に位置する入谷(にゅうだに)集落は「神奈備の郷」と称される神聖な山里です。この入谷地区にある大仁保(おおにほ)神社の境内に、平成29年度(2017年度)に整備されたのが奥明日香天空展望台です。歴史散策のメインストリームである石舞台古墳や飛鳥寺周辺の喧騒を離れ、車で約15分ほど山道を登った標高約450メートルの高台に位置しています。
現地を訪れた者を圧倒するのは、雑木林の合間から視界いっぱいに広がるパノラマビューです。設置されている無料の高性能望遠鏡を覗くと、約35キロメートル離れた大阪市の超高層ビル「あべのハルカス」や梅田周辺の高層ビル群が鮮明に視界へ飛び込んできます。さらに視線を移せば、日本三大山城の一つに数えられる高取城跡の石積みが木々の間から姿を現し、現代の大都市景観と戦国・古代の遺構が同一の視野に重なる奇跡的な空間を体験できます。
観光情報サイトや公式発表資料によると、集落の方々による温かな手作り感と静謐な神域の空気が共存している点も、多くのリピーターを惹きつける要因となっています。観光商業化された展望施設とは異なり、風の音と鳥のさえずりだけが響くプライベート感あふれる環境が、都会の喧騒に疲れた現代人の心を捉えて離しません。