「乾物は水で戻すもの」という固定観念こそが、かんぴょう調理で最も陥りやすい失敗の引き金です。シイタケや切り干し大根と同じように、ただボウルの水に浸して柔らかくなるのを待っているだけでは、どれだけ煮込んでも理想的な食感には仕上がりません。それどころか、仕上がりがキシキシと固くなったり、特有のえぐみが残ったりする原因になります。
この失敗を回避するために欠かせない工程が「塩もみ」です。かんぴょうの塩もみの理由は、大きく分けて3つあります。第1に、塩の浸透圧と物理的な揉み込みによって、固く締まった植物繊維の細胞壁を適度にほぐし、内部まで均一に水分を吸わせる道筋を作ること。第2に、保存のために燻蒸処理された二酸化硫黄(漂白剤成分)を浮き上がらせ、水とともに洗い流すこと。そして第3に、乾物特有のぬめりや青臭さを取り除き、出汁の染み込みを劇的に高めることです。
「塩を振って揉むと水分が抜けて余計に固くなるのでは」と誤解されがちですが、実際にはその逆です。塩によって繊維を一度引き締めつつ揉みほぐすことで、その後の加熱時に驚くほど均一に吸水し、固くならないかんぴょうの下ごしらえが完成します。料理人が「かんぴょうは下ごしらえで8割が決まる」と口を揃えるのは、この工程の有無が最終的な弾力と口溶けを決定づけるからです。