けあらしは、冬になればどこでも日常的に見られるわけではありません。発生には大気と海洋が特定のパラメーターを満たす必要があります。最大の決定要因となるのが海水温と気温差です。
気象庁の観測データや気象研究所の解析によると、けあらしの発生には最低でも10℃以上の温度差が必要であり、水面を覆い尽くすような濃密な気嵐が出現するためには「水温と気温の差が15℃以上」に達することが理想的な境界値とされています。例えば、海水温が10℃前後の海域であれば、早朝の気温がマイナス5℃以下まで冷え込む必要があります。
表から読み取れる通り、けあらしの発生条件は極めて繊細です。強い冬型の気圧配置(西高東低)のときは気温こそ下がりますが、北西の季節風が吹き荒れるため霧はかき乱され、滞留することができません。最も発生しやすいのは、冬型の気圧配置が緩み、移動性高気圧が日本列島をすっぽりと覆って風が凪いだ夜です。晴れ渡った夜空に向かって地表の熱が宇宙へと逃げていく放射冷却が極限まで進み、内陸の冷気が川沿いや谷間を伝って沿岸部へ静かに流れ込む早朝に、爆発的なけあらしが発生します。