ネット掲示板やSNSを中心に囁かれ続けてきた「オダギリジョーは仮面ライダークウガを黒歴史として扱っている」という言説。この噂が広まった背景には、彼がブレイク以降に後続の仮面ライダー映画や記念作への客演を一切行ってこなかった事実や、公式プロフィールへの記載時期を巡る誤解が関係しています。
しかし、当時のオーディション現場や関係者の証言を丹念に紐解くと、事実は全く逆であることが分かります。そもそも当時23歳だったオダギリジョーは、リアルな芝居や映画表現を志向しており、子ども向けの変身ヒーロー番組に対して強い違和感を抱いていました。オーディションの場でも、審査員から課された変身ポーズを頑なに拒否するなど、周囲の空気に迎合しない若き表現者としての尖った姿勢を見せていたのです。
そんな彼を主人公・五代雄介に抜擢したのが、チーフプロデューサーを務めた高寺成紀でした。高寺プロデューサーは、既存の型にはまらないオダギリの佇まいと反骨精神に惚れ込み、直接こう口説き落としたと当時の特番インタビューや対談記録に残されています。
「これまでの子ども向け特撮番組の常識を全部ぶっ壊したい。大人の鑑賞にも耐えうる、徹底してリアルな人間ドラマを作る。そのためには、特撮の枠組みに反発している君の力が必要なんだ」
この真摯な口説き文句に心を動かされたオダギリは、「この大人が目指す挑戦に賭けてみよう」と出演を決断しました。現場では監督やスタッフと連日連夜にわたり演技論を交わし、時にスタッフの情熱に涙しながら過酷な1年間の撮影を走り抜いたのです。自著や後年の特別番組でも「僕の役者としての基礎はすべてクウガの現場で作られた」と公言しており、彼にとってクウガは決して消し去りたい過去ではなく、誇り高き表現の原点となっています。