ヒシミツ醤油のストーリーは、波乱に満ちている。江戸時代中期にあたる宝暦13年に福岡県川崎町で創業して以来、200年以上にわたって地元の人々の味覚を支え続けてきた。しかし、時代の変化や後継者問題といった地方の醸造業が直面する厳しい現実の中で、平成の半ばに一度はその長い歴史の幕を閉じ、製造を休止せざるを得ない事態に追い込まれた。
転機が訪れたのはそれから数年後のことだ。「地域の歴史と食文化の象徴であったあの味を、決して消してはならない」――地元の有志や熱意ある若い世代が立ち上がり、途絶えていた蔵の再興プロジェクトが始動した。単に昔のレシピを再現するだけではなく、現代の暮らしや人々の感性にフィットする形で暖簾を再考する。この執念とも言える情熱が、奇跡のブランド復活へと繋がったのだ。