井手上漠の恋愛観を深く理解する上で欠かせないのが、2026年に刊行された初のフォトエッセイ『normal?』における記述や、数々のテレビ番組・インタビューでの生の告白です。
幼少期から「男らしく」「女らしく」という周囲のステレオタイプに違和感を抱き、島根県隠岐郡海士町という自然豊かな環境で母親の無条件の肯定を受けながら育った背景があります。自著の中では「自分は男でも女でもなく、性別・井手上漠である」というアイデンティティを確立するまでの葛藤が赤裸々に綴られています。
恋愛に関しても同様の哲学が貫かれており、「男性だから好き」「女性だから惹かれない」という性別のフィルターが存在しません。一方で、特番インタビューなどでは「周りが話す『恋のドキドキ』が自分にはまだよく分からない」と率直に語る場面もありました。これは現代の心理学やセクシュアリティ研究で言われる「アロマンティック(他者に対して恋愛感情を抱かない性質)」や「クィア」のグラデーションに位置づけられるものであり、恋愛を無理に人生の中心に置かない誠実なスタンスが表れています。