複雑に絡み合う人間の業を見事に体現したのが、坂口健太郎と有村架純のふたりだ。劇中で優しさという名の鎧を纏う男を演じた坂口健太郎は、本紙の独占インタビューで次のように語ってくれた。
「彼の中にあるのは、悪意ではなく徹底した善意なんです。でも、その善意が相手の呼吸を止めていく。セリフ一つひとつの間や、相手の目を見つめる角度まで、完璧な優しさがもたらす狂気を意識して演じました。単なる悪人よりも、自分を良い人間だと信じ切っている人間の方がはるかに恐ろしいと感じましたね」
一方、その圧倒的な善意の前に精神的に追い詰められていくヒロインを演じた有村架純は、役作りにおける葛藤をこう振り返る。
「怒る理由を与えてくれないことの絶望感をどう表現するかに苦心しました。『あなたが正しい』と言われ続けることで、自分がどんどん悪者になっていくような感覚。過剰な承認が人間をいかに孤独にするか、現場では常に息苦しさと戦っていました」
実力派の二人がぶつかり合うことで、単なる恋愛模様にとどまらない深刻な心理サスペンスとしての熱量が画面全体に満ちている。