ネット上の情報や初参加者の間で頻繁に見られるのが、「高円寺阿波おどりは徳島の単なる縮小コピーに過ぎないのではないか」という誤解です。しかし実際には、両者の間には発祥の歴史的背景と演出形態において決定的な差異が存在します。
昭和32年(1957年)、商店街の活性化を目的に「高円寺ばか踊り」として産声を上げた高円寺の阿波おどりは、徳島の伝統的な阿波おどり振興協会や連から直接指導を仰ぎつつも、中央線カルチャー特有のロックやジャズ、サブカルチャーの熱気を取り込んで進化してきました。徳島が「演舞場というスタジアムで見せる整然とした美」を追求しているのに対し、高円寺は「観客と踊り手の距離がゼロ距離で交差するストリートライブの狂騒」に真髄があります。
「吹鼓連」「葵新連」「天翔連」「飛鳥連」「江戸歌舞伎連」といった高円寺を代表する有名連の演舞を見れば、その違いは一目瞭然です。地響きのような大太鼓の低音、鉦(かね)の鋭いビート、篠笛の哀愁を帯びた旋律がビル街の壁面に反響し、身体の芯まで直接揺さぶられる感覚は高円寺でしか味わえない唯一無二の体験です。