取組前に呼び出しの手で掲げられ、土俵を悠然と回る懸賞幕。この一見伝統的な広告媒体に、いま決定的な構造変化が訪れている。人気力士の取組や千秋楽の結びの一番となれば、出稿上限枠は瞬く間に埋まり、特定枠を確保するための水面下の攻防が激化しているのだ。
出稿現場の内幕を探ると、単なる企業の認知獲得にとどまらない戦略が見えてくる。1本数万円から出稿可能とされる懸賞幕だが、結びの一番や注目の一戦では数十本が連なって土俵を周回する。この「連なり」の中に自社ロゴを刻むこと自体が、ブランドのステータスや信頼性の証明として機能している。最新のスポンサー戦略では、場内の観客だけでなくテレビ中継やSNSでの拡散を計算に入れたデザイン・色のコントラスト戦略まで綿密に構築されるようになった。