日本のグルメファンの間でしばしば疑問視されるのが、トルコ料理の選定理由だ。「なぜイタリア料理や和食ではないのか」という声は少なくない。しかし、その答えは中世から近代にかけて君臨したオスマン帝国の歴史的構造にある。
アジア、ヨーロッパ、アフリカの3大陸にまたがる巨大帝国を築いたオスマン帝国の首都イスタンブールには、世界中の希少なスパイスや食材が集積した。トプカプ宮殿の巨大な厨房では、皇帝や貴族を満足させるために千人規模の料理人が技術を競い合った。ケバブに代表される肉の調理法、豊富な野菜のオリーブオイル煮込み、洗練されたスープ、ペストリー文化。現代の地中海料理や中東料理の多くは、このオスマン宮廷食をルーツに持つ。東西の食文化を融合させ、周辺地域へ波及させた歴史的功績こそが、選出の最大の理由である。