日本の密教美術・仏教美術において、大日如来は二つの異なる世界観で表現される。それが「金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)」と「胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)」だ。刺青のデザインを構築する際、このどちらの世界観を採用するかによって、彫り物の表情はガラリと変わる。
金剛界の大日如来は、智拳印(ちけんいん)を結び、揺るぎない絶対の智慧を表す。一方、胎蔵界の大日如来は法界定印(ほうかいじょういん)を結び、母の胎内のごとき無限の慈悲と育みの力を示す。背中一面の構図を決めるにあたり、鋭い意思を象徴したい者は金剛界を、包容力や静けさを求めたい者は胎蔵界を選ぶなど、彫師との入念な対話によって一生モノの構図が生み出される。