この建物が持つ独創的な空間構造にいち早く反応したのが、日本のファッション業界を牽引する異才たちだった。デザイナーの川久保玲率いるコム デ ギャルソンは、ブランドの黎明期においてこの地に旗艦店を構え、自らの前衛的な衣服と空間を完璧にシンクロさせた。無機質なコンクリートや整然としたビルでは表現し得ない「歪み」や「奥ゆき」が、衣服の持つ力強さを一層引き立てたのだ。
川久保玲が求めたのは、単に商品を並べる店舗ではなく、訪れた客が五感でブランドの世界観を体感できる空間そのものだった。コム デ ギャルソンがこの場所を選び、長年にわたって強い存在感を放ち続けたことは、ファッションと建築が奇跡的なシナジーを生み出した象徴的な出来事として、今も語り継がれている。