民間病院である慈恵病院の果敢な挑戦に対し、行政の対応は揺れ続けてきた。熊本市は自治体として同院の活動を注視しつつも、法的な後ろ盾がない状態での運用に対する懸念を拭いきれない。一方、厚生労働省をはじめとする国の中央省庁も、内密出産に関する法制化や制度設計に慎重な姿勢を崩していない。
この行政の躊躇が、結果として現場の医療従事者に過度な責任を背負わせる結果を生んでいる。児童福祉の観点から言えば、すべての子どもが健やかに育つ権利を持つはずだ。しかし、身元不明のまま保護された子どもの戸籍作成や特別養子縁組の手続きには、現在の児童福祉法や民法の規定が壁として立ちはだかる。行政と民間の溝をいかに埋めるかが、今まさに試されている。