世界中で数十億ドルの興行収入を叩き出した『パイレーツ・オブ・カリビアン』3部作。ジョニー・デップ演じるジャック・スパロウ船長、オーランド・ブルーム演じるウィル・ターナーとともに物語を牽引したエリザベス役は、世界中の少女たちの憧れの的となりました。しかし、第3作『ワールド・エンド』(2007年)をもって、キーラは事実上のシリーズ本編からの降板を選択します。
当時、ネット上では「出演料を巡るトラブル」「共演者との不仲」といった無根拠な噂が飛び交いました。しかし、後に英BBCのポッドキャストや各メディアのロングインタビューで彼女自身の口から語られた真実は、名声という名の暴力に晒された若き表現者の凄絶なサバイバルでした。
第1作の撮影当時、キーラはわずか17歳でした。映画の世界的大ヒットにより、彼女の日常は一変します。ロンドンの自宅前には24時間体制で数十人のパパラッチが張り付き、車で外出するたびに追突事故を誘発するような危険な追跡を受けました。当時の英国タブロイド紙は、彼女の激痩せ報道や私生活のスキャンダルを執拗に煽り立てたのです。
公私ともに境界線を破壊された結果、キーラは22歳のときに重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)とパニック発作を発症。授賞式のレッドカーペットを歩くために、催眠療法を受けなければ家を出られないほどの極限状態に追い込まれていました。「常に誰かに監視され、性的対象として消費される恐怖」に耐えかねた彼女は、巨大フランチャイズの重圧から降り、精神的な自立を取り戻すために映画の世界から一時休養を取る決断を下したのです。