ネット上のレシピサイトやSNSで散見される「水にさらしてアク抜きをすればソラニンは抜け落ちる」という主張も、重大な誤解を含んでいます。
確かにソラニン類は極性を持つアルカロイド配糖体であり、水への溶解性を微量持っています。しかし、植物細胞の強固な細胞壁の内部に結合しているため、冷水に数十分晒した程度で溶出する量はごく微量にすぎません。スープや煮汁に溶け出したとしても、汁ごと摂取してしまえば体内への吸収量は変わらないのです。
人体が持つ最も優れたセンサーは「味覚」です。ソラニンやチャコニンには、独特の強い「苦味(えぐみ)」と喉を刺すような「収斂味(しびれ感)」が存在します。調理後の料理を口に運んだ際、以下のような感覚を覚えたら直ちに嚥下を止め、吐き出してください。
- 舌の奥や喉の粘膜にチクチクとした刺激が走る
- じゃがいも特有の甘みではなく、薬品のような不快な苦味を感じる
- 後味として口の中に強い渋みやえぐみがいつまでも残る
「味付けを濃くしたから」「マヨネーズやカレー粉で誤魔化せるから」と食べ進めるのは自殺行為に等しい判断です。苦味を感じた時点で、その個体には中毒域に達するグリコアルカロイドが含まれていると断定すべきです。
万が一、ジャガイモの芽を食べたときの対処法についても手順を把握しておく必要があります。少量であっても違和感を覚えた直後であれば、口内に残ったものをうがい等で吐き出します。ただし、すでに飲み込んで時間が経過している場合、無理に指を突っ込んで吐かせると吐瀉物が気管に入り誤嚥性肺炎を併発する危険があります。
意識がはっきりしていれば、水分(常温の水や経口補水液)を少量ずつ摂取させて脱水を防ぎつつ、速やかに内科や小児科、あるいは救急医療機関に連絡して医師の指示を仰いでください。受診時には「緑化したジャガイモまたは芽の生えたジャガイモを喫食した」事実と、発症までの経過時間を明確に伝えることが、適切な初期治療(輸液管理や対症療法)への近道となります。