なぜおせちに日本料理「松風」?裏表のない意味とプロ直伝レシピを徹底解説

なぜおせちに日本料理「松風」?裏表のない意味とプロ直伝レシピを徹底解説

なぜおせちに日本料理「松風」?裏表のない意味とプロ直伝レシピを徹底解説についての最新情報をお届けします。

お重を開けたとき、端正な市松模様や末広がり(扇形)に切り分けられた松風焼きは、決して派手さはないものの独特の風格を漂わせています。おせち料理に松風が選ばれる最大の縁起の理由は、その極めて機知に富んだ言葉遊びと道徳観にあります。

料理の表面には、芥子(けし)の実や白ごまがびっしりと散らされて香ばしく焼き上げられているのに対し、ひっくり返した裏面には何もついておらず、焼き色だけが素朴に残されています。この姿を、平安時代の歌人・在原行平と海女の悲恋を描いた能楽の古典『松風』の有名な一節「浦寂し(うらさびし)鳴海がた、松風ばかりや残るらむ」に重ね合わせたのが始まりです。

浜辺の「浦が寂しい」という情景描写を、料理の「裏が寂しい(何もない)」という言葉に掛け、転じて「裏が無い=隠し立てをせず、裏表のない潔白で誠実な心で一年を過ごす」という強烈な祈念が込められました。江戸時代の武家社会において、面目を重んじ嘘偽りを嫌う武士たちに好まれた歴史的背景も、この料理が祝膳の定番へと昇華した要因の一つです。

古典芸能の雅な情緒を日々の食事に結びつけ、視覚的な特徴を人生訓へと昇華させる精神性は、日本料理の伝統料理が持つ歴史の奥深さを象徴しています。表面を華やかに飾り立てながらも、裏面を隠さずさらけ出すその潔さは、現代を生きる私たちにとっても対人関係の原点を思い出させる象徴的なメッセージです。

山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。