日本の国鳥が正式に決定されたのは、終戦から間もない1947年(昭和22年)3月22日のことです。当時、第33回日本鳥学会総会において、鳥類学の泰斗である黒田長禮や山階芳麿らを中心とした議論の末、満場一致でキジが推挙されました。
国際社会において各国が自国の象徴となる鳥類を定めるなか、日本鳥学会が掲げた「国鳥選定基準」は主に以下の4点に集約されます。
① 日本固有の鳥類であること(本州・四国・九州に広く生息)
キジ(学名:Phasianus versicolor)は、本州・四国・九州の平地から山林にかけて自然分布する日本固有種です。世界中に分布するコウライキジとは明確に亜種・独立種レベルで区別され、「日本列島にしか生息しない」という独自性が最大の決め手となりました。
② 古典文学や民間伝承に深く定着していること
『古事記』『日本書紀』の神話時代から記述が見られ、『万葉集』では40首以上も詠まれています。さらに童話『桃太郎』では、鬼退治の重要な仲間(空からの偵察・攻撃役)として登場するなど、日本人の生活感情に古くから溶け込んでいました。
③ 雄の気品と勇気、雌の強い母性愛
雄は深緑と赤の鮮やかな羽色を持ち、堂々たる体躯を誇ります。一方、雌は地味な保護色ですが、巣の近くで山火事が起きても卵を抱いたまま逃げずに焼け死ぬという伝承から、「焼け野の雉子(やけののきぎす)」として子を思う親心の象徴とされてきました。
④ 姿が大きく、肉味が美味で狩猟鳥として適していること
現代の感覚からすると意外に思われますが、選定当時の戦後復興期において「実用的な狩猟鳥獣として国民生活に寄与できること」も明確な評価項目でした。キジは一夫多妻制で繁殖力が高く、適正な狩猟管理を行えば絶滅しにくいという頑強さも評価されたのです。