松風雅也のフィルモグラフィは、一見すると脈絡のないモザイク画のように見える。『DEATH NOTE』の魅上照役で見せた、理性を剥ぎ取られていく信奉者の狂気。「削除! 削除!」という絶叫は、今なおアニメ史に刻まれる怪演として語り継がれている。その一方で、『桜蘭高校ホスト部』の鳳鏡夜のような冷徹かつ計算高い影の司令塔を、驚くほど湿度の低い低音で涼やかに成立させてみせる。
さらに『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のガエリオ・ボードウィン。育ちの良さゆえの純粋さと、裏切りに引き裂かれた復讐者の激情。仮面をかぶり、業火を背負って叫ぶ彼の声には、単なるアニメ的カタルシスを超えた「人間の怨嗟」が濁流となって渦巻いていた。美声で耳を撫でるのではない。聴き手の鼓膜に摩擦係数の高い感情を直接擦りつけるような声質。彼が演じるキャラクターが決して薄っぺらな偶像に堕ちない理由は、この声のザラつきにある。