志村知之さんの存在が日本中で爆発的な話題となった決定的な契機は、2017年3月末の東村山市役所退職日にありました。定年後も再任用職員として勤務を続け、70歳を迎えた節目での勇退を地元メディアや民放各局が取材した際、カメラの前に立った知之さんの姿があまりにも弟・けんさんに酷似していたためです。
ふとした瞬間の目元の垂れ方、トレードマークの口髭、さらには独特のハスキーな低音のハスキーボイスや照れ笑いの仕草に至るまで、まるで志村けんさんがコントのキャラクターを演じているかのような錯覚を視聴者に与えました。テレビ取材で「弟のコントは観ますか?」と問われた知之さんは、「観てますよ。昔からくだらないことばかりやってるなと思いながらね」と、志村けんさんそっくりの声と表情で破顔し、お茶の間の爆笑と感動を誘いました。
知之さんは行政職員として市民から「志村さん」と親しまれる一方、弟の立場を気遣い、職場や公の場で自ら進んで「志村けんの兄」であることを吹聴することは一切ありませんでした。関係者の証言によると、志村けんさんもまた、市役所で市民のために地道に汗を流す兄を誇りに思っており、折に触れて麻布十番や銀座の飲食店に兄を招いては、美味い酒を酌み交わす間柄だったといいます。