ビールスタンド重富の銀山町本店には、飲食店としては極めて異例のルールが存在します。「営業時間は夕方の17時から19時までのわずか2時間」「注文は1人につき原則2杯まで」という規定です。さらに店内におつまみや料理の用意はなく、完全な立ち飲みスタイルで提供されます。
一見すると頑固で敷居の高い営業方針に思われがちですが、このルールには店主の温かい理念と地域社会への深い配慮が隠されています。重富酒店の役割は、自店で客を囲い込んで利益を最大化することではありません。「最初の一杯を最高な状態で味わって喉を開き、幸せな気分のまま広島の居酒屋やお好み焼き屋へ繰り出してもらう」という、街全体のハブ(0次会拠点)としての存在意義を明確に定めているからです。
2杯という上限設定も、人間の味覚構造に基づいた合理的な判断です。舌がビールの繊細な温度や泡の質感の違いを最も鮮明に知覚できるのは最初の一杯から二杯目までであり、それ以上杯を重ねるとアルコールによって味覚が麻痺してしまいます。「最高の感動を記憶に刻んだ状態で、次のお店のおいしい料理とお酒を楽しんでほしい」というマスターの情熱が、このストイックな枠組みを支えているのです。