岡村隆史という稀代の才能が命を落とさず、引退の道を選ばずに済んだ最大の要因は、相方である矢部浩之さんの極めて冷静かつ温かい決断にありました。
2010年6月、仕事現場へ向かう移動の車中、岡村さんは錯乱状態のまま矢部さんに仕事の不安や金銭の悩みを訴え続けました。「まだ話したい」とすがる岡村さんに対し、矢部さんはこれ以上の稼働は命に関わると直感。岡村さんの言葉を遮るように、しかし確固たる優しさをもって告げました。
「もうええ、岡村さん。少し休んで、体調整えて、復帰したらどうですか?」
矢部さんはその足で事務所幹部やチーフマネージャーに直談判し、岡村さんの全レギュラー番組の降板と無期限休養を強く要請しました。コンビの看板番組が失われ、自身の収入やキャリアが激変するリスクを一切顧みず、「相方の生命を守る」ことを最優先したのです。この矢部さんの揺るぎない覚悟と受容があったからこそ、岡村さんは責任感という名の呪縛を解かれ、治療に専念することができました。
そして休養から約5ヶ月後の2010年11月27日、フジテレビ系『めちゃ×2イケてるッ!』のスペシャル番組にて奇跡の復帰を果たします。相方と仲間たちが笑顔で迎えたその瞬間は、日本のバラエティ史に残る感動的な転換点となりました。