鼻ペチャ犬を家族に迎えるにあたり、絶対に目を背けてはならないのが特有の身体的リスクと高額になりがちな医療費です。両犬種ともに頭蓋骨の奥行きが短い構造上、「短頭種気道症候群」の発症リスクを常に抱えています。
短頭種気道症候群とは、鼻の穴が狭い「鼻腔狭窄」や、喉の奥の肉が垂れ下がる「軟口蓋過長症」などが複合し、日常的に呼吸困難を引き起こす病態です。寝ているときの激しいいびき、少し動いただけでガーガーとアヒルのように鳴る呼吸音(ストライダー)は、愛らしい仕草ではなく病的な酸欠シグナルであるケースが多々あります。
特にフレンチブルドッグはボストンテリア以上に鼻腔が狭く、気道の変形が重篤化しやすい犬種です。夏場のパンティング(口呼吸による体温調整)が極めて非効率なため、外気温が25度を超える日や高湿度の室内では、容易に体温が40度を超える熱中症に陥ります。日本国内の臨床データでも、短頭種気道症候群に対する軟口蓋切除や鼻腔拡張の手術を受ける割合はフレンチブルドッグが圧倒的に高く、手術費用は片側・両側合わせて15万円〜35万円前後に上ることも珍しくありません。
さらに皮膚疾患のリスクも見逃せません。フレンチブルドッグは顔の深いシワの間に汚れや皮脂が溜まりやすく、日常的な拭き取りを怠ると「皺壁皮膚炎」やマラセチア感染症を即座に引き起こします。ボストンテリアは皮膚トラブルが比較的少ない反面、遺伝性白内障や角膜潰瘍といった眼科系疾患、膝蓋骨脱臼(パテラ)に注意を払う必要があります。