社会心理学において、人間は予期せぬ危機に直面した際、「自分だけは大丈夫だろう」と事態を過小評価する「正常性バイアス」に陥りやすいことが知られています。はしかに対しても、「まさか自分が」「今どき流行するはずがない」という油断が、職場や家庭内での二次感染を生み出す最大のトリガーとなっています。
リスクを冷静に選別し、社会的な混乱を防ぐための「行動基準」を以下のように提示します。
【優先して抗体検査・接種を検討すべき人】
- 1972年10月〜1990年4月生まれで、過去の接種回数が1回のみ、または不明な人
- 医療従事者、保育士、教職員、空港・ホテルなど不特定多数の外国人と接する職種の人
- 妊娠を希望している女性およびその同居家族(妊娠中はMRワクチンを接種できず、感染すると流産・早産リスクが高まるため事前の対策が必須)
- 海外渡航(特に東南アジア、中東、欧州など麻疹流行国)の予定がある人
【今は大人の任意接種を慎重に見合わせるべき人】
- 母子手帳等で「2回の接種歴」が明確に記録されている健康な成人
- 過去に医療機関の血液検査で十分な麻疹抗体価が確認されている人
- 乳幼児の定期接種枠を圧迫してまで、直近の感染リスクが極めて低いにもかかわらずパニック的に駆け込もうとしている人
そして、最も重要な鉄則が「もし疑わしい症状が出た場合の受診行動」です。埼玉県やさいたま市が最も強く呼びかけているのは、「発熱や発疹が出たからといって、いきなり近隣の医療機関や夜間救急の待合室に飛び込んではならない」という点です。
麻疹の疑いがある患者が一般の待合室に入ると、そこに居合わせた免疫のない乳幼児や基礎疾患を持つ患者へ一気に空気感染が広がります。該当する立ち寄り場所にいた心当たりがあり、発熱や咳などの症状が出た場合は、必ず受診前に最寄りの保健所または受診予定の医療機関へ電話で事前連絡を入れてください。医療機関側の指示に従い、時間外の動線や専用の隔離室を経由して受診することが、地域医療を守る最低限のモラルであり義務です。