無敵の怪異と化した炭治郎が人間に戻れたのは、重なり合った奇跡と、散っていった者たちの遺志があったからです。暴れる炭治郎を身を挺して抱きとめたのは、珠世の薬によって一足先に人間に戻っていた妹・禰豆子でした。血を流しながら「お兄ちゃん、家に帰ろう」と泣き叫ぶ禰豆子の姿が、炭治郎の意識の底にわずかな躊躇いを生じさせます。
そして最大の決定打となったのが、栗花落カナヲの決死の特攻でした。カナヲは胡蝶しのぶから託されていた予備の「鬼を人間に戻す薬」を所持していました。失明のリスクを伴う花の呼吸の奥義「終ノ型・彼岸朱眼」を発動したカナヲは、炭治郎の触手をかいくぐり、命を削りながらその薬を炭治郎の頸へと撃ち込みます。
体内に薬が巡る中、炭治郎の精神世界では無惨の残留思念が「お前は選ばれた存在だ」「私の意志を継げ」と甘い言葉で引き戻そうとします。しかし、下から炭治郎の身体を押し上げる無数の亡き仲間たちの手と、上から引き上げる禰豆子や仲間たちの声に導かれ、炭治郎は無惨の誘惑を断ち切りました。原作第203話「数多の呼び水」にて、炭治郎は無事に人間としての心と肉体を取り戻したのです。