「こめかみの上あたりを少し押されただけで、頭の奥に響くような激痛が走る」——サロンの施術現場やセルフケアの現場で最も多く寄せられる相談の一つです。この激しい痛みの正体は、筋肉の過度な持続収縮による局所的な虚血とトリガーポイント(痛みの引き金となるしこり)の形成にあります。
側頭筋は下顎を引っ張り上げる咀嚼筋の一種で、耳の上から扇状に側頭部全体へ広がっています。この筋肉を過剰に緊張させる最大の元凶が、日中の集中時や睡眠中に無意識に行われる食いしばり・歯ぎしりによる側頭筋のコリです。歯科領域で「TCH(歯列接触癖)」と呼ばれるこの現象では、通常は安静時に接触していない上下の歯が無意識に触れ合い続け、体重の2倍以上とも言われる強大な負荷が側頭筋へ持続的にかかり続けます。
過剰な負荷を受け続けた側頭筋の内部では、血管が圧迫されて血流が著しく阻害されます。筋肉細胞が慢性的な酸素不足に陥ると、ブラジキニンやプロスタグランジンといった発痛物質が大量に放出され、知覚神経を刺激します。つまり、指で圧迫したときに生じる激痛は、筋肉が限界を超えて拘縮し、「これ以上負担をかけないでくれ」と発している危険信号にほかなりません。さらに、眼球を動かす外眼筋の緊張は筋膜を通じて側頭部へと波及するため、長時間の画面注視による側頭筋マッサージと眼精疲労の密接な関連も、痛みを増大させる大きな要因となっています。