本作を語る上で、現在もネット上で議論が交わされるのが、第127話(糸子60歳)における主演女優の交代劇です。それまで圧倒的な支持を集めていた尾野真千子氏から、晩年パートを夏木マリ氏が引き継いだことに対し、当時は一部の視聴者から戸惑いの声が上がりました。
ネット上では「スケジュール都合による降板」「体調不良説」などの憶測が飛び交うこともありましたが、これは完全な誤解です。制作統括および脚本の渡辺あや氏が公式インタビュー等で明かしている通り、ヒロイン交代は企画当初からの演出プランでした。
その決定的な理由は、実在の小篠綾子氏が70代・80代にして放っていた「超人的なエネルギーと怪物性」を表現するためでした。特殊メイクで老け役を演じる手法では、若い俳優が内向的に縮こまってしまい、80歳を過ぎてもハイヒールを履き、派手な服を着て岸和田の街を疾走した小篠氏の生命力を表現しきれないと判断されたのです。
夏木マリ氏が演じた晩年の糸子は、まさに「岸和田のゴッドマザー」。歳を重ねてもなお衰えない創作意欲と、周囲を巻き込む圧倒的なオーラは、交代当初の違和感を瞬く間にねじ伏せ、物語を堂々たるクライマックスへと導きました。