五十嵐淳子という女性を語る上で欠かせないのが、若い頃に見せた鮮烈な存在感と、日本中を騒然とさせた中村雅俊との電撃婚です。
1970年代前半、映画『阿寒に果つ』のヒロイン役に抜擢されて脚光を浴びた彼女は、憂いを帯びた瞳と日本人離れした端整な顔立ちで瞬く間にトップ女優の座へ駆け上がりました。清楚でありながら芯の強さを感じさせる演技は映画監督やドラマ演出家から高く評価され、昭和の映画界・テレビ界を牽引する若手スターの筆頭格でした。
ふたりの運命が交差したのは、1975年の大ヒットドラマ『俺たちの勲章』での共演でした。型破りな熱血刑事役を演じた中村雅俊と、可憐な役どころを演じた五十嵐淳子。現場での共演を通じて惹かれ合ったふたりは、極秘交際をスタートさせます。
そして1977年、ふたりは電撃結婚を発表。当時24歳だった五十嵐淳子のお腹にはすでに第一子が宿っており、いわゆる「できちゃった結婚(おめでた婚)」でした。昭和50年代の日本において、人気絶頂の美男美女スター同士が妊娠を伴って結婚することは極めて異例であり、ワイドショーやスポーツ紙は連日連夜このニュースを大々的に報じました。
当時の会見で中村雅俊が見せた男気溢れる堂々とした物言いと、横で慎ましく微笑む五十嵐淳子の姿は、多くの国民の記憶に深く刻まれました。人気女優がキャリアの絶頂期で家庭に入り、夫を支える道を選んだ潔さは、昭和という時代を象徴するドラマティックな転換点だったと言えます。