ネット社会やビジネス現場でしばしば俎上に載せられる「働かないオジサン」というレッテルに対しても、楠木新氏は著書『働かないオジサン 悪者は誰だ』などを通じて深い社会学的メスを入れています。世間一般では「本人のやる気不足」「給料泥棒」と個人の資質ばかりが批判されがちですが、楠木氏の現場調査が明らかにしたのは、日本のメンバーシップ型雇用が生み出した構造的弊害です。
終身雇用と年功序列のもとで、20代・30代を滅私奉公で会社に捧げてきた世代は、自律的なキャリア形成や社外ネットワークを構築する機会を奪われてきました。50代を迎えて役職定年となり、突然「自律的に動け」「専門性を発揮しろ」と突き放されても、梯子を外された当事者が適応不全を起こすのは必然とも言えます。
楠木氏が指摘する定年退職後の孤独対策の本質は、この「組織への過剰適応」をいかに解毒(デトックス)するかという点にあります。会社内での権力関係や序列に最適化しすぎた思考回路を、フラットな個人の人間関係へと切り替えられない限り、いくら再雇用で働き続けても孤独の根本解決には至りません。