タワーナイブズ大阪の扉を開けると、そこには従来の刃物店にありがちだった「敷居の高さ」や「職人気質な近寄りがたさ」は一切ありません。明るく洗練された店内には、ずらりと並んだ美しい包丁の数々と、熱心に説明に耳を傾ける多国籍な客たちの活気に満ちています。
世界中の料理人がこの場所に惹きつけられる最大の理由は、「徹底した体験重視のカウンセリング販売」にあります。一般的な百貨店や専門店では、刃物はショーケースの中に厳重に保管され、購入前にその切れ味を直接確かめることは困難でした。しかしタワーナイブズ大阪では、スタッフの目の前で実際にトマトや人参、紙などを試し切りし、刃の入り方や手へのフィット感を五感で確かめることができます。
この革新的なアプローチを創出したのが、店主であるカナダ出身のビョルン・ハイバーグ(Bjorn Heiberg)氏です。20代で来日した同氏は、堺打刃物の卓越した切れ味と職人技に魂を揺さぶられ、刃物卸会社での修行を経て2011年に新世界でタワーナイブズ大阪を創業しました。当時のインタビューや関係者の証言によると、ビョルン氏は「日本の包丁は世界一の品質を持ちながら、その価値や手入れ法が正しく伝わっていない」という強い危機感を抱いていたといいます。
鍛冶職人と研ぎ職人が分業して極限の切れ味を追求する「堺打刃物」の伝統工芸構造をリスペクトしつつ、英語・日本語・その他多言語でその背景にある物語を丁寧に解説する仕組みを構築。これが口コミを通じて欧米の三つ星シェフから一般の観光客へと広がり、現在の爆発的な人気へと結実しました。