ウェブ上の配信にとどまらず、リアルな同人誌即売会の現場でも「無料」を巡るダイナミックな変化が生じている。創作オンリーの即売会として確固たる地位を築くコミティア(COMITIA)や、日本最大の同人誌即売会であるコミックマーケット(コミケ)におけるコミケ 一次創作の現在を取材すると、デジタルとアナログが融合した新たな配布形態が定着していた。
コミティア 無料配布 オリジナルのスペースを訪れると、机の上に並んでいるのは単なる1枚のコピーペーパーだけではない。物語の第1話やプロローグを丸ごと収録した豪華な「プレビュー冊子」や、美麗なイラストが印刷された「試し読みQRコード付きポストカード」が惜しげもなく手渡される。ある参加サークルの作家は、同人誌即売会の現場で次のように語ってくれた。
「印刷費や遠征費を考えれば、無料配布の小冊子は完全に赤字です。ですが、無名の一次創作を初見の読者に手にとってもらうハードルは極めて高い。現場で無料の導入部を手渡し、続きをウェブのpixivやFANBOXで読んでもらう。あるいは次回イベントで既刊を買ってもらう。この手触りのある出会いこそが、長年のファンを獲得するための最大の投資なんです」
かつては「会場限定の紙の同人誌」が至高とされた時代もあったが、現在は「現場での出会いをトリガーにし、デジタルで長期的に関係を維持する」というハイブリッドな創作活動が主流だ。一次創作の即売会は、単なる物品の売買所から、作家と読者が直接的な関係を結ぶための「ショーケースの場」へと進化したと言える。