情報収集の現場で非常に多い誤解が、「睡眠時無呼吸症候群と診断されれば、枕も健康保険で購入できるのではないか」という期待です。取材調査の結論から述べると、日本国内においてSAS治療用の枕に対する健康保険適用は一切認められていません。
病院の睡眠呼吸障害外来で保険適用(原則3割負担)となるのは、自宅での簡易睡眠検査や終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査、月額約4,500円〜5,000円でレンタル処方されるCPAP機器本体、およびマウスピース(口腔内装置=スプリント)の作製費用に限られます。どんなに医師が推奨する高機能枕であっても、全額自己負担の自由購入となる点に留意してください。
また、すでにCPAP治療を受けている患者における「枕難民化」も見落とされがちな盲点です。標準的な枕で横を向いて寝ようとすると、シリコン製の鼻マスクやフルフェイスマスクが枕に押し付けられ、マスクの隙間から高圧の空気が勢いよく漏れ出す「エアリーク」が発生します。この漏洩音や目元に吹き付ける風によって患者は中途覚醒し、最悪の場合は治療そのものを自己中断してしまうケースが多発しています。CPAP患者が枕を選ぶ際は、気道確保を謳う市販品ではなく、側面にホースの逃げ道が確保された「CPAP併用設計」を最優先で選定するのが鉄則です。