標準治療の柱である抗がん剤治療と、介入を行わない選択。この二者を比較する上で真に問われるべきは、単なる生存年数だけでなく生活の質(QOL)の維持である。近年の薬物療法は、分画された分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場によって著しい進化を遂げた。従来の脱毛や激しい嘔吐を伴う細胞毒性抗がん剤に比べ、副作用の制御技術は格段に向上している。
それでもなお、薬物投与に伴う倦怠感や不眠、経済的負担が患者の日常生活を蝕む事実は否定できない。対して、あえて治療を受けない道を選んだ場合、初期段階では薬の副作用に苦しむことなく穏やかな日常を維持できるメリットがある。だが、病状が進行した段階で押し寄せる激痛や呼吸困難といった自覚症状に対し、医学的介入なしで対抗することは不可能に近い。単に抗がん剤を避けることがQOLの向上に直結するわけではなく、緩和的な症状コントロールなしの放置は、むしろQOLを破滅的に損なう危険を孕んでいる。