作詞家としての頂点を示す代表曲の一つが、細川たかしが歌い大ヒットを記録した『北酒場』である。軽快なリズムに乗せて大人の情話を洒脱に描いたこの楽曲は、日本レコード大賞を受賞し、日本中で誰もが口ずさむ国民的ソングとなった。軽妙でありながらどこか哀愁を帯びたフレーズは、彼の非凡な大众感覚を証明している。
その一方で、彼は歌謡曲という枠組みを超えて文学の世界へと大胆に挑んでいった。直木賞を受賞した『長崎ぶらぶら節』では、江戸から明治へと移り変わる長崎を舞台に、芸者たちの生き様と消えゆく端唄の美しさを鮮烈に描き出した。ヒットメーカーとしての華々しい実績と、純文学にも通じる深い洞察力。この二卵性双生児のような才能の結実こそ、彼がポップカルチャーと純文学の双方に打ち立てた金字塔である。