ネット上の簡易的な解説記事やまとめ情報では、『お化けのロック』を「ドラマのタイアップとして制作された単なるコミックソング」「番宣のための悪ノリ企画」と要約してしまうケースが散見されます。しかし、これは作品の本質を見誤った大きな誤解です。
第1の盲点は、この楽曲が極めて計算された「久世光彦によるテレビドラマ解体実験」だったという点です。久世は生放送ドラマの手法やアドリブ、視聴者からの手紙を劇中で生電話で読む演出など、テレビというメディアの「生々しさ」を徹底的に追求していました。『お化けのロック』は、お茶の間がドラマを安全圏から眺めている受動的な態度を揺さぶり、テレビの向こう側から画面を突き破るための戦略的爆弾だったのです。
第2の盲点は、樹木希林という女優の覚悟です。彼女はこの年、1977年4月に放送されたチャリティ特番のオークション企画で、長年親しまれた「悠木千帆」という自身の芸名を一般人に売却し、辞書を適当に引いて「樹木希林」へと改名したばかりでした。自らのアイデンティティすら軽やかに脱ぎ捨てる覚悟を持った希林にとって、アイドルの郷ひろみと本気で悪ノリすることは、芸能界の既成概念に対する痛烈なアンチテーゼでもあったのです。