慶長元年の創業以来、430年もの歴史を刻んできた丁子屋は、旧東海道の丸子宿に現存する最古級の食事処です。江戸時代には、険しい宇津ノ谷峠を越える旅人たちに精のつく滋養食としてとろろ汁を振る舞い、街道名物としてその名を轟かせました。
丁子屋の名を一躍全国に知らしめたのが、江戸後期の浮世絵師・歌川広重が手掛けた『東海道五十三次・鞠子 名物茶店』です。萱葺き屋根の店先で旅人がとろろ汁をすするのどかな風景は、現在の店舗外観にも色濃く受け継がれています。さらに十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』や、松尾芭蕉が詠んだ「梅若菜 丸子の宿の とろろ汁」の句碑など、店内外には豊かな文芸と歴史の息吹が息づいています。
店内には歴史資料館のような展示スペースも併設されており、食事だけでなく江戸時代の街道文化を五感で体感できる貴重な文化拠点となっています。