物語の冒頭、アレンデール城の広間で繰り広げられた深夜の雪遊びは、観客誰もが微笑ましく見守る美しい姉妹の日常でした。しかし、この無邪気な遊びこそが、その後の姉妹の運命を13年間にわたって狂わせる決定的な引き金となります。
当時5歳だったアナは、生まれながらに氷と雪を操る力を持つ8歳の姉エルサに対し、「もっと雪を出して!」と歓喜しながら跳び跳ねました。エルサが魔法を生み出すスピードをアナの跳躍が上回った瞬間、足元を滑らせたエルサの手から放たれた氷の魔力が、アナの額を直撃します。意識を失い、体温を奪われて髪の一部がプラチナブロンドに変色していくアナの姿に、国王夫妻とエルサは激しい恐怖に突き動かされました。
アレンデール王室が助けを求めたのは、古代の知恵を受け継ぐトロールの長・パビィでした。パビィはアナの状態を診察し、「魔法が心臓ではなく頭(脳)に当たったのは不幸中の幸いだった。心臓であれば救うのは困難だった」と告げます。そして、アナの命を救うための絶対条件として施されたのが、「魔法に関する記憶の消去と改変」でした。
ここで重要なのは、パビィが奪ったのは「エルサとの絆」そのものではなく、「エルサが魔法を使ったという事実」に限定されていた点です。パビィの魔力によって、アナの頭の中にあった「エルサが魔法で作った雪山で遊んだ記憶」は、「普通の雪が積もった場所で仲良くソリ遊びをした記憶」へとすり替えられました。魔法の恐怖を心に残さないための防衛策でしたが、この処置が結果として、なぜ姉が突然部屋に閉じこもり自分を拒絶するようになったのか理解できないアナに、途方もない孤独を背負わせることになったのです。