日本の自転車産業の歴史を紐解くと、高位置のハンドル形状は決して異端なカスタムだけにとどまらない。日常の交通手段としての実用性を極限まで追求してきたメーカーの技術的アプローチとも深く結びついている。
日本を代表する自転車メーカーであるブリヂストンサイクル株式会社は、昭和の時代から買い物や通勤・通学に適したコンフォートモデルを数多く世に送り出してきた。乗降性の高さと楽な立ち姿勢を追求した同社のシティサイクル群は、日本の道路環境において「最も快適に走れる形状」を模索した結果であり、カマキリハンドルの持つアップライトな思想と共通の根拠を持っている。
また、世界の自転車コンポーネント市場を牽引する株式会社シマノのパーツ群も、安全なカスタムを成立させる上で不可欠な要素だ。ハンドル高を変更する際には、ブレーキレバーの引きしろや変速シフターのケーブル長がミリ単位で精緻に適合していなければならない。シマノが誇る高い精度の変速システムやブレーキ構成は、ハンドル形状を変えた車両であっても確実な制動力を維持するための技術的土台となっている。国内トップメーカーの積み重ねてきた安全設計思想があってこそ、現在の多様なカスタム文化が成り立っていると言える。