動物園や野生下で見られるシマリスをはじめとしたリス科の動物たちは、樹上や地上を俊敏に駆け回る卓越した身体能力を持つ。しかし、その尾には驚くほど脆弱な構造が隠されている。捕食者に尾を掴まれた際、皮膚と皮下組織だけが鞘(さや)のように抜け落ち、本体だけが間一髪で逃げ延びる「スリーブ自切(デグロービング損傷)」と呼ばれる生存戦略だ。
爬虫類のように尾の骨ごと綺麗に離断して再生する機構とは異なり、リス科の自切は皮膚組織の剥離にとどまる。科学解説・ドキュメンタリー番組が捉える大自然のドラマでは、タカやイタチの爪を逃れるための奇跡の脱出劇として描かれることが多い。だが、天敵のいないはずのケージ飼育下において、この防衛反応は痛烈な人為的悲劇へと姿を変える。
回し車への挟み込み、ケージ扉の開閉時の接触、あるいは驚いて逃げようとする個体の尾をとっさに手で掴んでしまう行為。日常のほんの些細な油断が引き金となり、一瞬にして尾の毛皮が剥ぎ取られてしまうのだ。