掃除における洗剤の役割は、大きく分けて「汚れを化学的に分解・中和すること」にあります。汚れの性質と反対の性質を持つ物質をぶつけることで、汚れを浮かせたり溶かしたりするのが基本原理です。
重曹はpH約8.2の弱アルカリ性を示し、キッチンの油汚れ、皮脂汚れ、手垢などの「酸性の汚れ」を中和して落としやすくします。対照的にお酢(酸度4〜5%の酢酸)やクエン酸はpH約2〜3の酸性であり、水垢、石鹸カス、トイレの尿石といった「アルカリ性の汚れ」を分解する特性を持ちます。
ところが、この両者を同時に混ぜ合わせてしまうと、酸とアルカリが互いの力を打ち消し合う「中和反応」が即座に起こります。反応後は中性の塩(酢酸ナトリウム)と水に変化してしまうため、アルカリ性としての油汚れ分解力も、酸性としての水垢分解力も劇的に消失します。激しい泡立ちが起きている瞬間、人間は視覚的に「汚れが強力に分解されている」と錯覚しますが、実際には洗浄成分そのものが無効化されている状態に他なりません。