駅を降り立った瞬間に視界へ飛び込んでくる、青空にふわりと浮かぶ雲のような巨大な屋根。従来の駅前広場にありがちだった「画一的なバスターミナルとアスファルトの照り返し」という無機質な印象は、ここ熊本駅白川口には一切存在しません。
熊本駅白川口(東口)駅前広場が専門家や旅行者から極めて高い評価を受ける最大の理由は、「交通結節点としての高度な機能性」と「公園のように人が留まれる居心地の良さ」を極限まで融合させた点にあります。鉄道、路面電車(熊本市電)、路線バス、タクシー、一般車という異なる速度の交通手段を巧みにゾーニングしながら、そのすべてをひと続きの軽快な大屋根で覆い尽くす試みは、日本の公共空間デザインにおける金字塔と称されています。
熊本市やJR九州の都市計画資料によると、かつての熊本駅周辺は市街地中心部(通町筋・下通方面)と心理的な距離があり、「通過するだけの駅」という課題を長年抱えていました。その構造的弱点を打破すべく推進された熊本駅白川口の再開発は、単なるインフラ整備にとどまらず、人々の行動様式そのものを塗り替える起爆剤となったのです。