「しいては」の誤用の温床となっている強いて言えばとの違いについても、境界線をくっきりと引いておきましょう。
前述の通り、強いて言うならの意味は、「条件が不十分だったり差が僅差であったりする状況で、無理をしてでも1つを選ぶ・表現するならば」という限定的な仮定です。
【正しい使用例】
・「どちらの候補者も甲乙つけがたいが、強いて言うなら英語力のあるAさんを推したい」
・「今回のプレゼンに大きな不満はないが、強いて言えばグラフの視認性をもう一段高めたかった」
このように、「強いて」の背後には常に「本来はそこまで差がない」「無理に結論を出す必要はない」という留保が存在します。ここから「は」だけをくっつけて「強いては」とし、影響拡大の意味で使うことは文法的にあり得ません。「強いて言うなら」は判断に迷う場面での絞り込みの言葉であり、「ひいては」は未来へ向かってスケールを広げる言葉です。思考のベクトルが真逆であることを認識しておけば、混同するリスクは完全に排除できます。