「鳩との戦いがカビキラーで終わった」というSNS上の投稿を目にして、救いを求めるようにスプレーボトルを手にする住民は後を絶ちません。なぜこれほどまでに塩素系洗剤が鳩対策として取り沙汰されるのか、その背景には鳩の生態と成分特性の双方が関係しています。
鳩をはじめとする鳥類は、嗅覚が極端に発達しているわけではないものの、刺激性の強い揮発性ガスには敏感に反応します。カビキラーの主成分である次亜塩素酸ナトリウムと界面活性剤は、強烈な塩素臭を放ちます。この刺激臭がベランダに充満している間、鳩が不快感を覚えて一時的にその場を離れるのは事実です。
さらに見逃せないのが「マーキングの消去」という側面です。鳩は自身のフンや仲間のフンの臭いを頼りに「ここは安全な場所だ」と認識し、強い執着を持って同じ場所に戻ってきます。カビキラーが持つ強力な酸化・漂白作用によってフンの臭気成分が分解されると、鳩にとっての目印が一時的に消失します。その結果として「散布した直後に鳩が寄り付かなくなった」という体験談が生まれ、ネット上で鳩対策カビキラーの効果として拡散されていきました。
しかし、これはあくまで一時的な目眩ましにすぎません。塩素の揮発成分は屋外では風に流されやすく、散布から数時間から半日程度で臭気濃度は激減します。フンの臭いが消えたとしても、ベランダそのものが雨風を凌げる「安全な休息場所」と認知されている場合、臭いが薄れた途端に鳩は何食わぬ顔で戻ってきます。根本的な撃退策としては限界があることを認識しなければなりません。