中学時代の勇敢な行動は、芦戸三奈にとって美しい武勇伝だけで完結するものではありませんでした。超常解放戦線との「全面戦争編」において、山林を薙ぎ倒しながら進撃するギガントマキアの咆哮を耳にした瞬間、彼女の脳裏に押し込めていた原初の恐怖がフラッシュバックします。
マキアの口内へ睡眠薬を直接投薬する極限ミッション中、全身に酸を纏う新技「アシッドマン」を展開して肉薄した芦戸でしたが、怪物の声を聞いた瞬間に精神が凍りつき、薬を落としてしまう痛恨の事態に直面します。絶体絶命の危機を救ったのは、他ならぬ切島鋭児郎でした。かつて動けなかった少年が、心身を極限まで硬化させた「安達羅剛力(ちからくらべ)」で彼女を受け止め、代わりに薬を投じる姿は、二人の関係性における劇的な役割の反転と相互救済を象徴する屈指の名シーンとなりました。
心理学における「代理トラウマ」や「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」の知見に照らし合わせても、芦戸が直面した恐怖の再燃は極めて自然な人間の生体反応です。驚異的だったのは、彼女がその痛恨の失敗から逃げ出さず、恩師ミッドナイトの無念を背負いながら第二次決戦へと立ち向かった点でした。
決戦場となった群訝山荘跡において、芦戸は仲間たちが窮地に陥る中、自身の最大奥義「アシッドマン アルマ」を発動。皮膚を守る軟質の酸をさらに高密度化させ、酸耐性を持つ因縁の敵を圧倒して仲間を守り抜きました。彼女は「守られるヒロイン」としての枠に収まることなく、恐怖を乗り越えて自らの手で過去との因縁を完全に清算したのです。