ネット上の掲示板やSNSでは、しばしば「ALIVEはミスチル史上もっとも暗い鬱曲」「精神的に参っているときには聴いてはいけない」といった極端な言説が散見されます。しかし、こうした表面的なレッテル貼りは、楽曲の本質を見誤った誤解と言わざるを得ません。
確かに、制作当時のミスチルのALIVEと桜井和寿の鬱状態は密接にリンクしており、1990年代後期のバンドを取り巻く環境は殺伐としていました。しかし、桜井自身が歌の中で綴っているのは「絶望に身を投げること」ではなく、「絶望を飼い慣らしながら一歩進むこと」です。“夢”や“愛”といった耳あたりの良い言葉に逃げ込まず、寒々とした現実をありのままに直視した上で、「馬鹿げた運命を恨むより、ただ前に進む」という極めて実用的なプラグマティズム(実用主義)を提示しています。
臨床心理学のフレームワークである「マインドフルネス」や「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)」の観点から見ても、辛い感情や不安を無理にポジティブ思考で上書きしようとすると、かえって抑圧が強まり精神は破綻しやすくなります。『ALIVE』が行っているのは、徹底した「ネガティブ・ケイパビリティ(どうにもならない事態に耐える力)」の提示です。絶望を抱えたまま生きていて良いのだという許しこそが、多くのファンを危機的な淵から救い上げてきた真の理由なのです。