映画ファンの間で繰り返し語られる要素が、観客の心に深い傷痕を残す戦場のピアニストのトラウマシーンの数々です。劇場公開時やテレビ放送時には、あまりのショックに途中退席する観客が相次ぎました。
中でも際立つ場面が、親衛隊(SS)による家宅捜索で高齢の車椅子の男性が立ち上がれなかったことを理由に、兵士たちによってバルコニーから通りへと生きたまま投げ落とされる場面です。また、ゲットーを取り囲む壁のわずかな隙間から這い出ようと試みた幼い少年が、向こう側にいた兵士に殴打され、仲間が引っ張り出したときには息絶えていたシーンや、飢えに耐えかねて路上にこぼれた泥水混じりの人道支援スープを人々が舐めとるシーンなど、人間性が完全に否定された現場が淡々と映し出されます。
映画レビューサイトのFilmarksで評価4.2点(5点満点)、米ロッテントマトで観客支持率96%と極めて高い戦場のピアニストの評価と評判を誇る背景には、単に観客をおびえさせるホラー的演出ではなく、歴史の暗黒面を誤魔化さずに記録した誠実さがあります。ネット上のリアルな感想でも「観終わった後、食事を口にできる日常の尊さに涙が出た」「善悪の二元論では割り切れない歴史の狂気を感じる」といった声が根強く占めています。